花札

【考察】花札解題(1)1月札「松に鶴」は縁起物の詰め合わせ

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花札は古くからある日本の代表的なカードゲームといえる。月毎に割り振られた絵札には四季の移ろいが表現され、あまり遊ばれなくなった現在でも、その意匠は様々な商品やサービスに用いられている。

江戸時代の生まれたとされる花札は、中国文化や平安時代、江戸時代の風習などが取り入れられ、深い意味が隠されているという。本記事では、その意味について素人ながら調べられる範囲で調べ、考察してみた。

解題において特に大石天狗堂のブログ池間里代子先生の論文を参考にさせていただいた。ここに謝意を表したい。

松も鶴も「縁起が良い」

花札の1月は「松」が描かれている。
正月といえば門松を思い浮かべる人も多い。松は常緑樹であり、晩秋や冬においても青々としていることから、生命力(長寿)の象徴とされてきた。

門松。花札の図案と形状が似ているように感じる。

鶴はいわずもがな、「鶴は千年、亀は万年」の鶴である。
古代中国においては、仙人の乗り物として鶴が使われたとされ、やはり長寿の象徴となっている。

描かれている鳥について、「コウノトリ」という説もあるが、その根拠として「鶴は生物学の知見から松の枝に止まることはない」というもの。
元になったとされる中国の図案「松鶴長春」では、枝に留まる鶴が確認できる。古代は鶴もコウノトリも混同して「たづ」という雅称で呼んでいたため、本来はコウノトリであったという説である。

中国の吉祥図案「松鶴長春」

しかし、やはりこの鳥は「鶴」である
これについて流通経済大学の池間教授は「まつつる」で尻取りの言葉遊びになっていること、さらに「松に鶴」札の鶴は地面にいることを指摘しており、鶴であったとしている。

しかし一月の花札には「たづ」ではなく「つる」である必要があったと考えられる。なぜならば二月・三月の花札で用いられている言葉遊びの要素を考えるなら,「まつにつる」という尻取りでなくてはならない。「まつにこうのとり」では言葉遊びにならないのである。

流通経済大学社会学部論叢2009.3 14p

赤い太陽も「縁起が良い」

太陽が出てくる絵札は、この「松に鶴」だけである。
1月の太陽といえば、元旦の初日の出が連想されるが、江戸時代にも初日の出を楽しむ文化があったようだ。

歌川広重「江戸名所 洲崎はつ日の出」

そして、「松に鶴」の太陽は赤く描かれている。ほとんどの国では太陽を黄色(金色)や白色で表現するため、赤で表現する国は極めて珍しい。
日本で太陽が赤く表現されたのは、治承・寿永の乱(源平合戦)の頃からだという。それまで太陽は金色で表現されていたが、白地に赤丸の旗印を用いた源氏が勝利したことから、「赤い日の丸は縁起が良い」として広まったという。

源平合戦で用いられた日の丸(赤間神宮所蔵「源平合戦図屏風」より)

それに関連して、お祝い事でよく見かける「紅白」も源平合戦から用いられるようになったという。
「松に鶴」においても、太陽の赤と鶴の白で「紅白」を表現していると思われる。

その根拠に、松の5点札である短冊札には「あかよろし」という文字が書かれている。

松の短札。文字は「あのよろし」に見えるが、「の」の上に点があるため「か」である。(画像は任天堂製花札「丸福天狗」より)

「あかよろし」には「実に素晴らしい」とする説が一般的であったが、なぜ「あかよろし」だったのかは諸説ある。

前述の池間教授は、前から読むと「あか」、後ろから読むと「しろ」、「よ(与)」は「と」とも読ませることができるとして、「あかよろし」に「あかとしろ」という対比表現が含まれているという。

言葉遊びのような表現を随所に仕込んでいる花札において、作者が「あか」と「しろ」の言葉遊びをした可能性が高い。

縁起の良い「松に鶴」は1月にふさわしい

1月札「松に鶴」。(画像は任天堂製花札「丸福天狗」より)

「松に鶴」は、長寿の象徴である「松」と「鶴」、そして縁起の良い「日の丸」、最後に太陽と鶴で「紅白」を表現していると推定される。
花札には縁起の良い取り合わせが多く出てくるが、特に1月は縁起の良いものを最も多く詰め込んだ月といえる。

 

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