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【考察】花札解題(2)2月札「梅に鶯」は、本当にウグイスなのか

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花札は古くからある日本の代表的なカードゲームといえる。月毎に割り振られた絵札には四季の移ろいが表現され、あまり遊ばれなくなった現在でも、その意匠は様々な商品やサービスに用いられている。

江戸時代の生まれたとされる花札は、中国文化や平安時代、江戸時代の風習などが取り入れられ、深い意味が隠されているという。本記事では、その意味について素人ながら調べられる範囲で調べ、考察してみた。

解題において特に大石天狗堂のブログ池間里代子先生の論文を参考にさせていただいた。ここに謝意を表したい。

「梅に鶯」に描かれた鳥の種類は

ウグイス。茶色に近く、花札の色とはほど遠い(画像はWikipediaより)

ウグイスは茶色に近く、花札のような鮮やかな黄色や緑ではない。そのため、この鳥をメジロだという説を主張する人もおり、Wikipediaの一部においても2月札の鳥をメジロとする記述もある。

メジロ(画像はWikipediaより)

日本では、ウグイスとメジロは混同されることがよくある。いわゆる梅にウグイスという取り合わせが花札をはじめ、よく見かけられるが、実際には梅(沖縄では緋寒桜)の蜜を吸いにくるのはメジロであり、藪の中で虫を食べるウグイスはそのような姿で見かけられることは少ない。

ウグイス - Wikipedia

しかし、Wikipediaの記述は誤りである可能性が高い。
ウグイスの仲間には多くの種類があり、日本には15種類のウグイスがいるという。

大石天狗堂のブログでは、この鳥をコウライウグイスではないかと主張している。

コウライウグイス。画像はWikipediaより。

しかし、コウライウグイスの特徴である黒いラインがなく、花札の鳥=コウライウグイスとは言いがたい。

 

私は、この鳥がキバラムシクイではないかと考える。

キバラムシクイ(画像は中国科学院動物学博物館より)

キバラムシクイはウグイス科で、色合いもよく似ている。その名のとおり腹側は黄色い毛で覆われ、鮮やかな色合いであるという。
キバラムシクイは主に中国や東南アジアに分布しているが、少ないながら日本でも目撃例があるとのこと。中国画題の影響である可能性も考えられるが、昔は日本にも多くのキバラムシクイがいたのかもしれない。

前述の池間教授も、次の2つの点でメジロではなくウグイスであると主張する。
1つ目に、メジロには群れをなして木に止まる性質(メジロ押し)があり、もし花札でメジロを描くとすれば、1匹だけではなく数匹が群れている様子を描くはずだという。

そもそもめじろの特徴は数羽がくっついて「めじろ押し」をすることではなかったか。もしめじろを描くのであれば生態的特徴である「めじろ押し」を描くはずである。

流通経済大学社会学部論叢2009.3 15p

2つ目は地方札の1つ「越後札」にかかれた和歌にある。
越後札の素札には「うぐいすの 鳴音はしるき 梅の花 色まがへとや 雪の降るらん」という和歌が書かれている。
これは「梅に鶯」に描かれた鳥が「ウグイス」であることの、1つの証明となるだろう。

「あかよろし」と「紅白」

前述の和歌「うぐいすの 鳴音はしるき 梅の花 色まがへとや 雪の降るらん」には、さらに2つの重要な点がある。
和歌の意味としては、「ウグイスの鳴く声が聞こえる白梅の花 その色は降った雪と見間違えるほどです」というもの。
つまり、和歌の梅の花は、白である。しかし、花札の絵柄には見事な赤い梅の花が咲いている。
また、「雪」が積もっているとすると、雪の白と梅の赤との対比も考えられる。

1月札の考察にもあるが、2月の短冊札にも「あかよろし」と書かれている。

梅の短札。文字は「あのよろし」に見えるが、「の」の上に点があるため「か」である。(画像は任天堂製花札「丸福天狗」より)

「あかよろし」には「実に素晴らしい」とする説が一般的であったが、なぜ「あかよろし」だったのかは諸説ある。

前述の池間教授は、前から読むと「あか」、後ろから読むと「しろ」、「よ(与)」は「と」とも読ませることができるとして、「あかよろし」に「あかとしろ」という対比表現が含まれているという。

言葉遊びのような表現を随所に仕込んでいる花札において、作者が「あか」と「しろ」の言葉遊びをした可能性が高い。

【考察】花札解題(1)1月札「松に鶴」は縁起物の詰め合わせ

 

「あかよろし」は、1つ目にそのまま「赤よろし(赤は良い)」という意味、2つ目に「紅白」を隠し題として仕込み、縁起を担いだのではないかと考えられる。

 

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