雑学・トリビア

【考察】花札解題(3)3月札「桜に幕」の幕に描かれたムカデの謎

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花札は古くからある日本の代表的なカードゲームといえる。月毎に割り振られた絵札には四季の移ろいが表現され、あまり遊ばれなくなった現在でも、その意匠は様々な商品やサービスに用いられている。

江戸時代の生まれたとされる花札は、中国文化や平安時代、江戸時代の風習などが取り入れられ、深い意味が隠されているという。本記事では、その意味について素人ながら調べられる範囲で調べ、考察してみた。

解題において特に大石天狗堂のブログ池間里代子先生の論文を参考にさせていただいた。ここに謝意を表したい。

桜の短冊札に書かれた「みよしの」の意味

桜の短札(画像は任天堂製花札「丸福天狗」より)

「みなしの」に見える短冊札に描かれた文字は、「みよしの」である。「みよしの」は、桜の名所である吉野の雅称であり、地方札のひとつ越後札にも書かれているとおり、後鳥羽上皇の和歌が元になっていると思われる。

吉野山の桜(画像はeoおでかけより)

み吉野の高嶺の桜散りにけり嵐も白き春のあけぼの

新古今集・後鳥羽院

前述の池間教授は、後鳥羽院に「鳥」という字が入っていることから、花鳥合わせの隠し題になっていると主張している。

「桜に幕」はなぜ幕か

醍醐寺三宝院の幔幕(画像は桜花ぶろぐ2008より)

満開の桜の下に描かれた幕は幔幕と呼ばれるもので、ここが花見の会場であることを示している。
花見の風習は平安時代からあったものの、庶民が本格的に花見を楽しんだのは江戸時代からといわれている。
1720年には徳川吉宗が庶民の花見を奨励し、浅草や飛鳥山に桜を植えさせたという記録も残っていることから、花札が誕生したと思われる文化年間(1804~1816)には、多くの人々が花見を楽しんだと思われる。

池間教授の論文では、満開に幔幕(まんかいにまんまく)で頭韻になっているという説を主張している。

 

「桜に幕」の幔幕に描かれたムカデの謎

桜に幕の右側に細長い虫が描かれている花札(画像は大石天狗堂「総理大臣花かるた」より)

大石天狗堂のブログで提議のあった「ムカデの謎」がある。

さらによく調べましたら、明治時代前の【桜に幕】には、幕の縦縞の中に文様が…。

菊花紋や菱紋など、まるで有職文様(ゆうそくもんよう:平安時代から続く宮中の衣装や輿などに使われている位の高い文様)が描かれていました。

そして気になるのが、幕の右端に【二匹の細長い虫が縦に並んでいる絵柄】があった事です。

『な、何、これ?』

武田家のムカデ陣立ようでもあるが、あれはもっとクネクネとした図案でしたし、でも頭の先に触覚らしきものがあるのは、やはり虫系のようでもあり…。

『わかりません!』

御存じの方がいらっしゃれば御教授下さい。
何も出ませんけど。

大石天狗堂 花札の謎シリーズ 3月札『桜に幕』前篇

これについて、私は次の通り仮説を立ててみた。

まず、生産されたのは江戸時代であること。そして、花札が賭博の道具として用いられたこと。
最後に脚の多い昆虫であるムカデを採用したこと。

これから考えるに、「おあしが多い」という洒落ではないかと考察できる。

江戸時代、お金のことを「お足(あし)」と呼んでいた。賭け事でお金を増やしたいと考える人にとって、ムカデは縁起の良いお金持ちの虫と捉えることもできる。
2匹並んでいる理由については、「ムカデはつがいで行動する」という俗説(実際はそのようなことはない)から描かれたものに違いない。

 

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